連絡帳


■ 6月14日

卵が先か鶏が先か

世の中には面白い疑問が沢山転がっています。題の卵が先か鶏が先か
なんて議論に代表されるパラドックスがそうです。僕は暇な時や現実
逃避したい時にああでもなこうでもない等と、とりとめもなく考えて
は不思議が支配する世界へと旅をします。


パラドックスには有名なものが数多く存在します。例えばタイムマシ
ンが開発された世界である男性が自分が生まれる前の時代の母親の所
に行き、その未来の自分の母親を殺したとしましょう。するとどうな
るか。
母親が殺されてしまえばその母親から男性が生まれる事はない。とい
う事は母親を殺す男性が存在しなくなるのだから、母親は生きている。
母親が生きているという事は男性は生まれる。男性が生まれると言う
事は母親を殺す。・・・・・・・・・という感じで永遠にループして
しまい答えは出ません。そもそも答えがあるのかもわかりません。こ
のような事を考えるのが不毛だといえばそこまでの話ですが僕は好き
なんです。



こんな事ばかり考えているとたまにもの凄い発見をしてしまう事があ
り自分を天才だと本気で思うことがあります。


この間バイト中に暇で耐えられなかった時僕はこの母親と息子のパラ
ドックスについて考えていたのですがその時に気付いた事があります。



何故に殺すのは母親なのか?この疑問が頭に浮かんだ事がきっかけで
した。無限にループさせるのであれば父親でもいいはず。だけど、実
際は母親が殺される。始めはこのパラドックスが議論され始めた頃は
今以上に男尊女卑な時代だったから殺されるのは女だったのかな?な
どと思っていたんですがこのパラドックスにはこんなちんけな想像を
遥かに絶する哲学的、文学的なメッセージが秘められていたのです。



―――時は23XX年。高度に技術が発達し、ドラえもんの持つ秘密道具
なんか当たり前になっていた。しかし、人間の心は良い意味でも悪い
意味でもほとんど変わらず犯罪もあり戦争もあった。



今年で17歳になる康夫は反抗期の真っ最中だ。友人には笑顔を振りま
いているくせに自分の両親の言う事は頭から否定していつも両親と喧
嘩ばかりしていた。
ある日いつものように両親と喧嘩をしていた康夫はいつも以上に荒れ
てとうとう父親と殴り合いになってしまった。父親は力仕事をしてい
て体つきが良かった為康夫は間もなく父親にぼこぼこにされてしまっ
た。成す術も無く簡単に負けてしまった事がよほど悔しかったのか康
夫は父親を殺す事を計画しはじめ、完全犯罪にするにはタイムマシン
で過去に行き康夫が生活している時間軸とは違う時間軸で父を殺せば
何もかもが上手くいくはずと確信して早速これに康夫は着手した。



タイムマシンを操縦して20年ほど前に遡り当時新婚だった両親の家に
向かう康夫。いくら時間軸が違うとはいえ実の父親を殺すのだから、
緊張で嫌な汗をかいている。恐らくは顔色も真っ青で引きつっている
に違いない。先程からすれ違う人間が怪訝そうな顔でこちらを見てい
る。



そのうち両親が暮しているはずの家に着いた。様子を窺うと都合よく
父親が一人で在宅らしい。呼び出しブザーを鳴らす康夫。すると直ぐ
に玄関が開いた。


すかさず康夫は電子銃で父親を撃った。辺りに肉が焦げる嫌な臭いが
康夫の鼻腔を刺激し、康夫は我に返った。未来の自分の父親に目をや
ると死んでいる。ついに自分が殺したんだ。そう思うと康夫の胸には
達成感とわずかな後悔の念が押し寄せた。



ん?待てよ?



康夫に小さな疑問が湧く。


この時代に父親が死んでしまえば自分は生まれてこないのではないだ
ろうか?自分は消えてしまう!

そこまで考えると康夫は大慌てで目の前に転がる未来の父親の蘇生を
しだした。自分がいなくなってしまう。存在しなくなってしまう。そ
う考えるだけで恐ろしくて康夫はガタガタ震えだした。



しかし、康夫の努力も虚しく未来の父親である目の前に横たわった男
は再び目を開ける事は無かった。



自分が消えて無くなってしまうのは今か今かとビクビクしている内に
緊張と涙を流していたせいか喉の渇きをおぼえ、死体を乗り越え家に
入り冷蔵庫から飲み物を取り出した。康夫は自暴自棄になり食べ物を
漁りどうせ消えてしまうのだからと豪華な食事を作り腹いっぱい食べ
た。しかし、待てど暮せど自分が消えてしまう前兆もない。




そこで康夫は母親の浮気に気がついた。
康夫は丁度反抗期、思春期真っ盛り。自分の母親の行為と自分が誰か
にひどく悩みながら生きていく。



どうでしょう?このパラドックスでもし父親を殺してしまえばこんな
新たな問題を起こしかねないのです。だからこのパラドックスでは必
ず母親を殺さなければならないのです。



伝わり辛いかもしれませんがオチは伝わりましたか?
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■ 6月10日

感違い

携帯電話や、インターネットの普及率が近年うなぎのぼりで、世の
中は便利になるばかりで大変結構な事ですが、郵便局等は投函され
る手紙が目に見えて減り打撃が思いのほか大きいそうです。特に年
賀状の発行枚数が減り郵便局の主要な売り上げなだけあって深刻だ
と耳に挟みました。


確かにお正月に僕に届く年賀状もこの数年で減っているように思い
ます。



ごめんなさい!僕嘘つきましたぁ。考えてみると僕には学校の担任
位しか毎年年賀状なんてものは来てなかったので実感したという事
は真っ赤な嘘です。


ま、とにかく僕が言いたい事は年賀状の代わりをメールが果たすよ
うになったという事です。メールで年賀状の代わりをする事で、普
段メールを使い慣れているからでしょうか通常の年賀状では幾分か
しこまった文面になるのに対してメールで代用される年賀状では独
特の言葉使いが発展しているように思います。今では比較的良く使
われる『あけおめ』『ことよろ』等です。



年賀状なんて行きつけのお店のDMと幼馴染からの2,3通しか毎年来て
いなかった僕にも手軽だからでしょうか、メールでは明けましてお
めでとうというどれも似たような文面が狂ったように入ってきます。
『あけおめ』はもちろん『明けましておめでとう』で、『ことよろ』
は『ことしもよろしく』の略です。ほとんどのメールはこの二つの
単語が踊り狂っていますが、そんな中、毎年【髪切り職人】からも
送られて来るんですがその文面は



おめあけ
よろこと




完全なる感違いです。【おめあけ】ってなんの略ですか?
おめぇ!ここ開けろよ!』

なんて青春ドラマのワンシーンなのか?それとも

『は〜いボク、おめめを大きく開けてね〜』

なんて眼科医が結膜炎を患った幼児に対して言うお決まりの発言な
のか?


【よろこと】はなんの略ですか?
ことこそ人間が生まれてくる意味』

なんて哲学者の台詞なのか?


『昨夜の合コンでさ、結局ラブホに寄ろうってことになってさ。』

なんてモテモテ君の自慢なのか?

その上彼のメールは普段からそうなのですがALLひらがな。変換は一
切無し。読みづらいのなんのって。貴様の携帯には変換する為の十字
キーは付いてないのか
と正座させてお説教したくなる位に髪切り職人
のメールは読みづらい。



こいつは色々感違いをする男でつい最近まで生ビール以外のビールは
一度沸騰させたりで炭酸が入ってないと思っていたような男です。



でも、さすがに【あけおめ】なんて一度は流行語になりかけた言葉を
間違えるわけない。きっと不器用なあいつなりのボケなんだと思い、
いや、思いたかったので仲間内の新年会の時に何食わぬ顔して

『おめあけ』と、笑顔で言うと


『おぉ〜おめあけ!』

って屈託の無いあいさつが返ってきました。


その無邪気さが僕にはとても辛かった。素だったんだ…。


うん。本気でかわいそうに思った。



数日後、髪切り職人の家に遊びに行った時、彼が同棲している彼女に
『あけおめ』と簡単に新年の挨拶をすると、


『あはは、piroli君間違ってるよー。【おめあけ】だよぉ。』

なんて答えが返ってきました。



バカップルめが。

それでも幸せそうな彼らに殺意と敗北感を抱いた一人身の僕のお正月でした。
■ 6月9日

比較

比較するという事はとても大事な事です。『日本語、とても、美し
い』とはC.W.ニコル氏の言葉ですがこの美しい日本語でこん
な言葉があります。【切磋琢磨】この言葉はお互いに磨きあって人
間を向上させるといった意味があります。このお互いに磨きあうと
いうことはお互いを観察して自分にはない所を探したり相手の欠点
を見出し自分は同じ事をしないようにしようと思ったりする事を意
味してると思いませんか?僕はそう思います。つまり比較です。


このタイプの比較は良い方向にベクトルが向いてますが、美しい
日本語の中で比較する諺は前向きなものばかりではありません。
例えば隣の芝生は青い。これは他人のものは良く見えるという意
味でこの諺には人間のいやらしさ、浅ましさが如実に表現されて
います。



山田高志さん(36歳サラリーマン)は営業成績が伸びてきた事を評価
されて最近出世したばかりです。そこで山田さんは長年の夢だっ
た庭付き一戸建てを購入しました。新しい家に引越しも済みご近
所さんに挨拶回りも終わって一段落した頃に息子の政志(12歳・
小学六年生)は隣の家の里中明とは同級生で転校初日から仲良く
なります。新しい生活にも慣れてきだしたある日の日曜日、高志
は妻の政代と殺風景な庭を草花で埋め尽くそうと一日かけて季節
の花を植えたり芝生を植えたり植木を置いたりと頑張りました。
遊びから帰ってきた政志は自宅の庭がとても綺麗になっている事
を喜び夕食の時には両親にどれだけ庭を気に入ったかをアピール
してはしゃいでいました。


数日後小学校から政代は政志が明と喧嘩をして怪我をしたという
連絡を受け政志を学校まで迎えに行くと明の母親の栄子はすでに
到着していて政志、政代、明、栄子、担任の教師の5人で話し合
いをした結果喧嘩の原因は明が政志の家の庭に植えられた芝生が
自分の家に植えられている芝生よりも青々としていた事が気に入
らなくて政志にその話を持ち出したところ政志も明の家の芝生の
方が美しく見えており悔しかったので殴りあいに発展したという
事でした。


その日家に帰った高志は政志から事の顛末を聞き激怒します。実
は高志も前々から里中家の芝生の方が青いと感じていてその事で
息子が侮辱されたと思ったのです。同じ頃、里中家では大黒柱の
浩二も高志と同じように自分の息子と自分の庭が侮辱されている
と感じていました。完全なる感違い、すれ違いですがこれが悲劇
の始まりでした。



それからは山田家、里中家は目に見えるように仲が悪くなりまし
た。顔を合わせても挨拶はせず、子供達も学校では一言も話さず
周りのクラスメイトはいぶかるばかりです。


そんな中休みの日にもなれば両家は庭を隣家よりも良く見せよう
とやっきになっていました。



ある日高志は夜が更けた頃里中家の庭に侵入して芝生をむしり、
植木鉢から植木を引っこ抜き花壇を踏み荒らし庭をめちゃくちゃ
にしました。
翌朝、浩二が仕事に行こうと玄関を開けると目に入ってきた光景
に怒りで前が見えなくなりました。



数分後血まみれで立ち尽くす浩二の目の前にはついさっきまで隣
人であった山田家の三人が倒れていました。近づいてくるサイレ
ンの音で我に返る浩二。二度と動く事は無い山田家の三人。




諺には大抵教訓が含まれています。この悲しむべき事件は他人の
持つものを羨ましがってばかりしていた事が結果、誤解やすれ違
いを生み三人の命を失う事に繋がってしまいました。


比較する事は時には有益な事ですがその結果を憂いてはいけませ
ん。




他サイトのテキストと僕のテキストを比べると本当に情けない。
【他サイトのテキストは上手い】なんて諺が発生したらそれは、
今の僕のテキストが発端でしょう。



こんな中途半端なオチで許してください。
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